沖縄を食べる

「東京の駅前で沖縄そば店を」〜 一杯のそばに掛ける想いを一緒に紡ぎませんか?

「東京では駅前に蕎麦屋やうどん屋があるように、沖縄そば屋を駅前に作りたい」
「沖縄そばの裾野を広げ、クオリティを上げていきたい」

東京に、沖縄そばに情熱を傾ける沖縄料理店経営者がいます。
那覇市出身、合家(ごうや)株式会社 代表取締役社長の山畑喜一(やまはた きいち)さんです。

東京・人形町に沖縄料理店を開業して14年、昨年2020年に沖縄そば専門店を八丁堀に開業しました。
どうして東京の中心で沖縄そばか?その想いを聞きました。

沖縄そば専門店を開業するまでの道のり

「飲食店を開きたい」― きっかけは20歳の焼き鳥屋台

1977年生まれ、那覇市出身の山畑喜一(やまはた きいち)さんは、沖縄でバイク修理工として働きながら、いつかお店を持ちたいという夢を持っていました。
きっかけは20歳の時に知人の勧めで出店した焼き鳥屋台。


「ベース(沖縄の米軍基地)でビールを仕入れて焼き鳥と一緒に販売して…ということが楽しかった。」

そう話します。
その後27歳で上京、和・洋・中さまざまなジャンルの飲食店で修行し、30歳の時に東京・人形町に沖縄料理店「あちこーこー酒場 合家(ごうや)」をオープンしました。

30歳、沖縄料理店をオープン – 試行錯誤の日々

オープンして最初の頃に、お客さんから鍛えられました」

慣れ親しんだ沖縄の味を提供するも、沖縄と東京の土地柄の違いから様々な指摘を受けたと言います。
暑い沖縄では塩分が効いた味付けが必要だが、空調設備が整ったオフィスで働く東京の人にとっては塩っぱく感じる。
逆に糖分が必要なんじゃないか?

そういう気づきを一つずつ積み上げ、季節やお客さんの年齢などに合わせて味を調整。
だんだんと愛される店に成長していきました。
(蛇足ですが私・くーみーも、「合家」で食べたチャンプルーの優しい味わいにホッコリしたうちの1人です。)

さて開業当時といえば、2000年代初めからの沖縄ブームも浸透し、東京に沖縄料理店が増えていた頃。
そんな中で他の店とどう差別化したのでしょう。

「来てくれたお客さんが元気になってくれる店にしようと思いました。
例えば、上司と部下のコミュニケーションが進むように生ビールをセルフサービスで注ぎ合い、お互いをねぎらうといった仕掛けも作りました。」
(※ コロナ禍で取り止め中)

なるほど、自然と会話が弾みそうなユニークなサービスですね。
続けてこういう話もしてくれました。

「一緒に働いている身内を大事にできないとお客さんも大事にできない。
どうしたら(身内のスタッフやお客さんを)大事に思う気持ちを伝えられるかを考えて積み上げていきました。
立地的なこともありオープンして1年はうまくいきませんでしたが、常連のお客さんやスタッフに恵まれ、徐々にお店が増えていきました。」

山畑さんの人柄が垣間見られる言葉です。

2020年、沖縄そば専門店をオープン – 駅前出店にこだわって

(左から「くわっち〜家」,「合家」,「琉球創喜」)

1号店のオープンから10年以上の月日が流れ閉店を余儀なくされた店もありつつ、現在は「あちこーこー酒場 合家」、「沖縄台所 くわっち〜家」、そして「沖縄そば専門店 琉球創喜(りゅうきゅうそうき)」の3店舗を経営している山畑さん。
なぜ東京で沖縄そば専門店を出そうと思ったのでしょうか。

「自分自身が東京で沖縄そばを食べたかったんです。
沖縄居酒屋のそばは飲んだ後に食べるシメという感じになってしまうのですが、そういうことではなく、そばを食べることが目的となる店があったらいいな、と。」


確かに、沖縄県内には多くのそば屋があり、一杯のそばをさっと食べに行くのが当たり前です。
でも沖縄県外にいると、「手軽に沖縄そばを食べたい」という欲求は無意識に抑えられ、「色んなタイミングが揃った時に食べるもの」と思っている…そのことに気づいた瞬間でした。

そして沖縄そば専門店をやると決めた山畑さんのコンセプトも明快です。

「東京では駅前に蕎麦屋やうどん屋やラーメン屋がある。
同じように、駅前に沖縄そばの専門店があると良いなと思って。
だから駅前での出店にこだわりました。」

その言葉通り、琉球創喜は八丁堀駅すぐの場所にあります。

沖縄そばへの想い・こだわり

1年半かけて麺を研究!

琉球創喜には製麺室があり、自家製麺を提供しています。
沖縄そばと言えば茹で麺を使うことが主流ですが、こちらではしっかりとしたコシのある生麺を使用。そしてスープがよく絡むちぢれ麺です。

それでは、製麺室の様子を見てみましょう!

① 粉合わせ編

② 粗掛け(生地作成)編

③ 圧延(生地伸ばし)編

④ 生地切り出し編

「沖縄そばって中華麺っぽいし、コシのある生麺だとラーメンみたいになっちゃうの?」
そんな疑問も湧きますが、そこはご心配なく。

「麺のクオリティを上げつつも沖縄そばらしい素朴さを残すように心がけています」

との答えが返ってきました。

スープ・麺・ソーキ、体に良い素材で丁寧に作る

私が訪れた日はラフテーを仕込んでいる最中で、オープンキッチンのお店にいると、一品一品手間ひまかけて丁寧に作っている様子が見て取れます。
そばに関してはどうでしょうか。

「麺には “かんすい” という成分を使うので無添加とはいえませんが、それ以外は無添加素材で作っています。
化学調味料を使う方が美味しいと感じやすく、やみつきになる味に仕上げやすいのですが、体に良い素材で作っていきたいです。」

時間をかけて煮込んだトロトロの軟骨ソーキ(スペアリブ)、うま味が深いスープ、そして自家製麺。
一度食べれば納得の一杯です。

「あえて沖縄の味に寄せすぎない」チームで日々研究

(看板メニュー: なんこつそーきそば 税込800円)

初めてこちらのそばを食べた時に「確かに沖縄そばの味ではあるものの、オリジナリティのあるスープだな」と感じた、その感想をぶつけてみました。

「僕や沖縄出身のスタッフが作ると “ザ・沖縄そば” の味になるんですが、沖縄県外出身者や外国人スタッフのやり方も取り入れることを意識しています。
スープを作る素材は変わらないけれど、分量のバランスや調理工程が少しずつ違う。
でもそのやり方を取り入れ、よりお客さんに合った味になるよう追求することが大事だと思い、日々みんなで研究しています。」

「沖縄そばらしさ」を大事にしつつ、メンバーを尊重しあってより良いものを作ろうと挑戦を続ける。
応援したくなる店である理由は、このチームワークにあるのかもしれません。

どうしたら食べられる?

イートインもテイクアウトもOK!お店へGO!

「琉球創喜」・「合家」・「くわっち〜家」の各店で食べられ、麺とスープはお店によって少しずつ違うので、これは3店舗回りたくなります。
また、各店で冷凍そばセットをテイクアウトできるほか、ラフテーやソーキも購入できます。
(※ 非常事態宣言中の営業時間は各店舗にてご確認ください)

ネット販売で全国どこからでもオーダー可能

ネット購入はコチラのサイトから。
冷凍で届くので保存しやすく、一食ずつ食べるのに重宝する小分け包装です。
沖縄そばを食べ慣れている方だけではなく「普段食べない味をたまには…」という方にもオススメ。
プレゼントとして選んだり、離れた家族に送るのにも良さそうです。

おわりに – 東京に沖縄そば専門店が増える日も近い!?

最後に、今後の目標をお聞きしました。

「沖縄そばの裾野を広げる・クオリティを上げるという流れを、東京で作っていきます。
大袈裟に言うと、この店に沢山のお客さんが来てくださることがきっかけで東京にそば屋が増えたり、沖縄から東京に出店してくることに繋がったりと、東京で “沖縄そば戦争” が起きたら業界が盛り上がるんじゃないかと期待して頑張ります」

さらに合家株式会社は、製麺・加工肉・スープ製造の工場を2021年10月から稼働予定です。
知らずに食べている麺が実はここで作られたもの、なんていうことが今後増え、沖縄そば屋が東京に増える道筋がその先に見えたような、今回のインタビューでした。
美味しくて体に良い沖縄そばが駅前で気軽に食べられる・・・そう遠くない将来に実現しそうな気がしてきませんか?

沖縄そばloverの皆さん、「興味はあるけれど食べる機会がない」と思っている皆さん、ぜひ一度「琉球創喜」のそばを食べてみてください。
そして、沖縄そばの裾野を一緒に広げていきましょう!


〈店舗情報〉
あちこーこー酒場 合家
沖縄台所 くわっち〜家
沖縄そば専門店 琉球創喜

〈執筆協力〉
合家株式会社


※ 2021年9月現在の情報です。