沖縄を知る

台湾と西表島の深い歴史を知る時が来た 〜 映画『緑の牢獄』

沖縄・西表島に幾つもの炭鉱があったことをご存知でしょうか?
そして、台湾や朝鮮から海を渡ってきた数多の坑夫がいたことを。

ドキュメンタリー映画『緑の牢獄』がこのほど公開されました。
西表島に眠る炭鉱と、80年前に台湾から渡ってきた老女のお話です。

『緑の牢獄』公式サイト


いやいや…悲しいです。切ないです。
でも、この事実を知ることができて良かった。

素直にそう思いました。

たくさんの方にご覧いただきたい作品ですから、今回は「観る前に知っておくと良いかも?」と思うポイントをご紹介していきます。
ネタバレ無しですので、安心してお読みください!

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ストーリー

主人公は台湾出身の橋間良子(はしまよしこ)さん。
養父母とともに10歳で台湾から西表島へ渡りますが、養父が台湾の坑夫を集める仲介人であったことから、炭鉱の壮絶な歴史とともに「良子おばぁ」の人生は有りました。
太平洋戦争終戦を期に炭鉱は閉山。時を経て家族が他界し、独りの生活が長く続くことに…
中心場面は90歳当時(2015〜16年頃)の彼女の日常風景で、ささやかな日々の暮らしに、炭鉱にまつわる記憶と、彼女の「アンサクセス」な人生が重ね合わされていきます。
また、綿密な歴史調査に基づいた再現映像も秀逸。心にグッと迫り来る内容です。

予告動画もどうぞ…

映画を観る前に! 3つのポイント+α

3/23に東京で行われた試写会にて、黄インイク監督にもお話を伺いました。

【試写会後のトークショーの様子/中央が黄インイク監督(台湾・台東市出身)】

台湾語と日本語が交じる、おばぁの真実の語り

映画の中で、おばぁは台湾語と沖縄なまりの日本語を交えて語ります。
母国語には、より感情も乗ることでしょう。
彼女が語る一言ひとこと、そして言葉にならないその表情から、多くのことを読み取ることができるはずです。
監督によると「おばぁの記憶はかなり正確だった」とのことですから、歴史的価値のある記録でもあります。

更におばぁが話す台湾語は、現代ではあまり使われない言葉(言い回し)を含むものだったのだとか。
台湾との関わりがない生活を長く送っていることが感じられる、エピソードです。

緑の島に眠る巨大な炭鉱跡、歴史的背景を押さえて

映画の公式サイトに、西表炭鉱に関する解説が掲載されています。
映画全体の流れが断然つかみやすくなりますので、ぜひご一読を。読みやすい長さにまとめられています。

西表炭鉱・解説

台湾と西表島の距離は? 「白浜地区」はどこ?

(GoogleMapより)

地理も押さえておきましょう。
坑夫たちの多くは台湾北部・基隆市から渡ってきたと見られていますが、西表島とは直線距離で約230kmと、近い関係です。
また、白浜地区は島の西端に位置します。

(GoogleMapより)

【番外編】意外と重要なスパイス??…アメリカ人青年「ルイス」。

良子おばぁが部屋を貸している青年ルイス、登場回数は多くないものの、作品の中で重要なスパイスになっています。
炭鉱のこと、白浜のことを語る彼の言葉はとてもシンプルでストレート。「そういう場所だったのか」と腑に落ちるポイントとなるのではないでしょうか。
そして「ルイスはおばぁとうまく共存しているの?どうなの?」という絶妙なバランスも、映画全体のちょっとしたアクセントになっています。

台湾移民をテーマにしたドキュメンタリー、シリーズでコンプリート!

「沖縄・八重山群島における台湾移民」をテーマにした作品は「狂山之海(くるいやまのうみ)」というドキュメンタリーシリーズで、『緑の牢獄』は2作目です。
1作目の『海の彼方』は台湾から石垣島に移り住んだ家族の物語で、2作目とは対照的に四世代100人が登場します。
3作目は移民3世の華僑青年団を追った作品とのこと。
次回作の公開も待ち遠しいです!

『海の彼方』公式サイト



ということで、今回は映画『緑の牢獄』、そして黄監督のドキュメンタリーシリーズについて、ご紹介してきました。
多くの沖縄好き・島好きな方々とこれらの作品をシェアできればと、心から願います。

『緑の牢獄』は全国各地で順次公開予定です。
感染症対策を万全に、ぜひ劇場へ足をお運びください。

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【黄監督とともに】

【執筆協力】ムーリンプロダクション
※ 記事中の場面写真は、ムーリンプロダクションよりご提供いただいています。